日蝕の次の作品だから、だいぶ前のものだ。
あらすじは以下の通り。ーーーーーーーーーーーーーー
明治三十年、奈良県十津川村。神経衰弱の気鬱を逃れ、独り山中をさまよう青年詩人・真拆は、老僧に蛇毒から救われ、山寺に逗留する。俗世から隔絶された奇妙な時空の中で、真拆はいつしか現実と夢界の裂け目に迷い込み、運命の女と出逢った。それは己の命を賭けることでしか成就しない愛、だが、刹那に失われる運命の愛だった…。古典的風格さえ漂う端麗な筆致で描かれた聖悲劇。
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美しい作品。ストーリーや、行間からにじみ出る筆者の主張や、これを読むことによる人生観に対する影響、といったものを期待すべき本ではなく、あくまで美しい日本語を読みたいと思って読む本だと思う。
その意味で、「決壊」とは根本的に異なる作品だ。
アマゾンのレビューの星が面白く、一番多いのが5で、次が1で、3がなくいという凹型の評判になっている。それだけでこの本が面白い気がするではないか。
批判する側からすると、この本はそれまでの文学者の表現方法をそれっぽく真似ただけで、なんら新しい表現に至っていない、中身がない、とする。
まあそれはそうかもしれない。
が、個人的には、個人の読み手による本の評価は、文学史に跡を残す作品かどうかで行うものでない以上は、(衝撃を受けるか、人生観を変えるか、という意味を含めて)面白いかだけで判断すればよいと思うし、その意味でこの本は、文章の美しさだけで面白い。特に当時の平野啓一郎がまだ20台半ばで、当時の日本でこの作品を書いたことを頭の隅に置きながら読むと、面白さはさらに際立つと思う。
で、その後に決壊のような作品を書くに至る。
こういう天才と同じ時代に生きていることは幸せだと思う。
個人的には次作をリアルタイムで読めることが、今一番うれしい作家だ。
![]() | 一月物語 (新潮文庫) 平野 啓一郎 新潮社 2002-08 by G-Tools |
↑カバーも割と好き。
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流麗な文体と幻想的な世界に魅了され、読み了えて泣きそうになりました。
しかしながら、一つだけ判らないことがあるのでご教授いただきたいのです。
「最後に残された白髪は誰のものか?」
おっしゃるとおり幻想的かつ感動的だと思います!
白髪、これは私見ですので違うかもしれませんが、真拆のもの(彼が現実世界に存在していたかの議論はおいておくとして)と考えるのが自然で、それ以上の追求はいらないのではないか、と思います。
こういったところで想像が膨らむのも魅力ですよね。